奈良先端科学技術大学院大学 理事・副学長 千原國宏
このたび第13回日本バーチャルリアリティ学会大会の大会長に就任させていただく
ことになりました。本学術研究集会は、「バーチャルリアリティに関する研究の進展
と知識の普及をはかり、もって学術の発展に寄与する」という本学会の目的を達成す
る上で、重要な事業のひとつです。来る2010年に平城京遷都1300年を迎える
「くにのまほろばやまと」の地に、皆様をお迎えし、最先端の科学技術の粋を集めた
研究集会を開催できることは、身にあまる光栄です。奈良先端科学技術大学院大学
(NAIST)も多様な側面からご支援させていただきます。
マスメディアの時代からインターネットメディアの時代に移行しつつあります。音
楽メディアとしてのレコードはとっくの昔に廃り、今や廃棄物を生み出す物質メディ
ア−CD−から、「いつでも」「どこでも」鑑賞できる地球に優しいインターネット
ネットメディアへと、音楽メディアが進化しています。「必要な人や必要なところ
に、必要な情報を必要な時期に配送できる」曼陀羅思想を具現するインターネットメ
ディアが、「必要とはしない人に必要であるかのように装って規格化した情報を常時
垂れ流す」マスメディアの一角を崩すまでに成長してきたことの証と考えます。な
お、バーチャルリアリティ技術は、コンピュータが創造する世界にさまざまな人工物
を持ち寄って参加することから、ユビキタスという概念とは異なると言われていま
す。しかし、NAISTでは、開学以来、全学統合情報ネットワークと全学情報環境シス
テムを曼陀羅と命名し、「いつでも」「どこでも」「なんでも」を合言葉に、ディジ
タル図書館をはじめとする人間の知的活動を支援するための情報技術の創発に取り組
んできました。また、地上波ディジタルTV時代の幕開けと共に、大画面の薄型ディス
プレイが家庭に浸透しつつあり、屋外でも動画が携帯端末で観賞できる現状を考慮す
ると、バーチャルリアリティ技術も、人間の知的活動を支援する上で有用な場合に
は、ユビキタス情報環境の構築上の主要な要素と考えられます。バーチャルリアリテ
ィ技術が新しいコンテンツの創造基盤となれば、インタラクティブ4Kビジョン環境
をはじめとする多彩な映像環境が整備されたユビキタスCOE拠点であるNAISTが共催さ
せていただく意義も高まります。
平城京に具現された神社仏閣がバーチャルシンボルであり、貨幣がバーチャルゴール
ドであるように、「目的とする機能を保有したコンテンツ」を持ち寄られる皆様との
愉快な出会いの場が構築できるよう努力いたします。
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